どこもかしこも、右も左も前も後も、西も東も北も南も

なんだか暗い記事を書いてしまったので、たまには明るい話題を書くことにする。

昨年から話題になっていた映画「翔んで埼玉」をようやく見ることができた。映画館でやっている時期には見ることができず(多分池袋に行くことになったんだろうな)、先日のテレビ放送時も何かの予定とかぶって見ることができていたかったのだ。アマゾンプライムに加入している人を家に招いて見る形であったが、その招いた人はさいたま市在住であったので、ある意味最高の環境である。ディレクターズカットを見ているような感じであった。

この映画、設定からしてカオスだが、そのカオスな世界をきちんと映像で表現しているように感じた。特に主演の二階堂ふみGACKTは「衣装を決めると本当に別世界に生きているような姿になるなぁ」と思って見ていた。もっとも二階堂ふみが男役で、2人の関係性がBLであることは見ていてしばらくは気づかなかったんだけどね。冒頭はことごとく埼玉県がコケにされ、横で見ていたさいたま市民も苦笑いであった。

その2人の埼玉県への逃亡劇、そして埼玉解放戦線が奮闘するパートと別に、そのパートの物語を「都市伝説」として語るラジオドラマが流れる現代パートでは、埼玉県の郊外の風景が広がる。田畑の真ん中に真っ直ぐな道路が走り、駐車場の広い店舗が道沿いに並ぶ。郊外というのはどこもあまり変わらない。それでも、出てくる店舗が山田うどん*1であることで「あ、埼玉だ」と認識できる。

劇中には「所沢」「春日部」といった埼玉県の具体的な地名が出てくるシーンも多々ある。埼玉県民が迫害される都市伝説の世界では、西武線のターミナルである所沢も野原家のあるベッドタウン春日部も、実際の街の風景と似ても似つかない有様である。画面内の光景に思わず吹き出してしまった。この映画に出てくる埼玉県(と群馬県)は、ディスカバリーチャンネルを見ているような気分になってくる。そこにはやっぱりリスペクトのかけらもない。

埼玉県民は怒りそうなもんだが、横のさいたま市民は「与野はすっこんでろ!」という台詞に大笑いしていた。笑い飛ばせるような度量を感じるとともに、埼玉県民の中にも「埼玉w」という自虐心のようなユーモアセンスはあるのかもしれないなぁと思った。そこをうまくくすぐって、痛快な作品になったのかなぁ?でも、埼玉県民以外にもヒットしたからこそ話題作になったわけだし、「埼玉w」というセンスは割と日本人に共通するスピリットかもしれない。「東京に憧れるけど、東京に住めない、もうちょっと足りない感じ」というべき?耳が痛いぜ!

ところで、この映画には千葉県も「埼玉のライバル」として登場する。自分は千葉県に数年住んでいたことがあるので、不思議な縁を感じるような映画だった*2。そういえば原作者は新潟出身で埼玉県に引っ越してきたという点で自分と同じだし、作中で「池袋にある埼玉県民のアジト」の建物の看板に、自分の行ったことのある居酒屋*3があったりして、何かと親近感がある。

なかなか出不精で、公開から1年以上経ってようやく見れたが、とても良かった。映画を見る習慣が今の自分にはないが、話題作には物怖じせずに触れていきたいなぁと思った。

*1:山田うどんをこないだ久しぶりに食べたんだけど、なかなかおいしい。はなまるうどん丸亀製麺よりもガッツリと定食をいただける店だ

*2:といっても千葉市より先には殆ど行ったことがない。少し前に会社の人間と房総半島を旅したのが初めてなくらいである

*3:この居酒屋、池袋駅のすぐ近くにあるしなかなかリーズナブルでおすすめ